一九四五年三月十日、五十年前の今日、東京は大空襲によって、いたるところ焼け野原と化し、一夜にして十万人のかけがえのない尊い命が失われました。
同じく五十年前、広島と長崎の原子爆弾は、人類がいまだかつて知らなかった悲劇を地上に現出させました。
いかなる哀悼の言葉も意味を失ってしまうほどの非情かつ残酷なもの、それが戦争のもたらすあらゆる惨禍であり災害であります。
そして半世紀がたちました。戦争を知らない人々が、都民の多数を占める時代がきました。東京の姿は一変しました。廃墟だったまちは、活動力にみちた大都市に変貌しました。それは、日本が平和のもとにあったからこそ実現できたものでした。
世界の相互依存関係がかつてないほど緊密になり、互いの協力がますます必要とされる現在、私たちは世界全体の平和なくして、幸せで安全な暮らしを営むことはできません。
いま世界は、激動の中にあって、大きな歴史の転換の時代を迎えています。民族や宗教の対立などに起因する悲惨な地域紛争、飢餓と貧困、難民と被災者、地球環境の破壊と悪化をはじめ、人々の穏やかで満ち足りた生活をはばむ要因が、次から次に生じています。不信と対立を克服し、信頼と協調による新たな国際秩序を模索することは、地球全体にとって緊急な課題であり続けています。国、民族、文化の違いをこえた取り組みが、今ほど求められている時はありません。
平和は、何ものにもまさってすべての基礎をなす条件です。日本国憲法が基本理念とする恒久平和は、私たちすべての願いであり、人類共通の目標です。
私たちは、軍縮と核兵器の廃絶を機会あるごとに強く訴え、戦争の惨禍を再び繰り返さないことを誓います。日々の生活において、平和を脅かす問題に、毅然として立ち向かい、忍耐づよく取り組むことを決意します。
一、私たちは、次代を担う子どもたちに、戦争の悲惨さと、それを防止することの大切さを、東京大空襲の体験などとともに語り伝えます。
一、私たちは、共に地上に生きるすべての人の人権を尊重し、差別を排し、思いやりと愛情をもって、誇るに足る地域社会をつくります。
一、私たちは、日々のくらしを注意深く見つめ、豊かな水と緑の地球環境を守ります。
一、私たちは、地球社会の一員として、世界の人々と交流し、相互の信頼を深め、協力連帯して、人類の福祉の向上に努めます。
一、私たちは、過去の歴史をかえりみて、ともに手を携えて平和な世界をつくり、相ついでやって来る新しい世代に引き継いでゆきます。
第五回東京都平和の日記念式典にあたり、私たちは、参加者の総意としてこのアピールを採択し、誓いも新たに平和を心から願う気持ちと決意を、全世界の人々に訴えます。
一九九五年三月十日
この「都民平和アピール」は、東京都が主催した東京都平和の日記念式典で参加したすべての人々が賛成して採択したものです。当時の都議会のすべての会派をはじめ、有識者なども一致して賛成したものです。
戦後70年を経て体験者の高齢化にともない、戦争の記憶が薄れつつあります。
東京は、アメリカ軍によって100回以上にわたる空襲をうけ、300万人が焼け出され、10万人以上の人々の命が奪われました。
戦争の記憶と記録をとどめ、次世代に戦争の惨禍を語り継ぐことが、今、急がれます。東京都にも公立の「平和祈念館(仮称)」を建設し、平和といのちの大切さを訴え続けていくことが求められます。
「東京都平和祈念館(仮称)」建設をすすめる会
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東京総合教育センター気付
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