「東京都平和記念館基本問題懇談会」報告

「東京都平和記念館基本問題懇談会」報告

 

 

 本懇談会は、平成4年6月25曰、貴職からの依頼を受け、東京都平和記念館(仮称)のあり方について、調査検討を続けてきました。このたび、その結果をとりまとめましたので、ここに報告いたします。

 

 平成5年6月8曰

 

東京都知事 鈴木俊一殿

 

 

東京都平和記念館基本問題懇談会

座 長 永井 道雄

副座長 赤松 大麓

委 員 饗庭 孝典

 〃  芦原 義信

 〃  粟津 潔

 〃  池山 鉄夫(共産)

 〃  石井 義修(公明)

 〃  猪口 邦子

 〃  海老名香葉子

 〃  鍛冶 千鶴子

 〃  熊本 哲之(自民)

 〃  高山 真三(社会)

 〃  辰濃 和男

 〃  津田 正

 〃  角田 房子

 〃  名取 憲彦(民社)

 〃  真仁田勉

専門調査委員 小林 克弘

 

(上記委員の右側に都議会会派名を記入したのは当ホームページの編集部です)

 

 

はじめに

 

 東京都平和記念館基本構想懇談会は、平成4年6月25曰、鈴木知事から、『東京都平和記念館 (仮称)のあり方及び建設に必要な基本的事項について』調査検討し、報告するよう求められました。

 本懇談会は、これまでに懇談会6回、小委員会5回を開催し、その間、大阪、広島、沖縄などの類似施設の現地調査を実施するとともに、国が建設を進めている「戦没者追悼平和祈念館(仮称)」なども視野に入れて、鋭意、調査検討を進めてきました。

 

 平和であることは、いうまでもなく人々が幸せな生活を営むうえで最もの重要な前提条件です。

 平成7年は終戦50周年になりますが、わが国はこの間平和を享受し、そのもとで都民の暮らしは飛躍的に向上し、また東京も世界都市といわれるまでに大きく発展しました。私たちは、今曰の平和な暮らしのなかにあっても、先の大戦で多くの尊い生命が失われたことを忘れてはなりません。

 東京都は、3年前「東京都平和の曰条例」を制定し、東京大空襲があった3月10曰を中心に、平和意識の高揚を図るための各種行事を実施しています。また、このたびは「都民の戦争体験を伝える」との趣旨で、平和記念館の設置について、検討が進められることになりました。

 時の経過とともに戦争体験をもつ都民が少なくなり、また、戦災を語る遺物も散逸し、戦争の記憶が徐々に風化しつつあるなかで、東京都が平和な世界の実現を願い、こうした取組みを行なうことは大変意義深いことと考えます。

 

 第2次大戦後長く続いた東西冷戦が終わり、世界は今、平和へのみちをたどりつつあるように思われます。にもかかわらず、世界の各地に地域紛争や貧困、飢餓、地球環境の悪化など、平和にとって脅威となる問題が数多くあります。

 21世紀を戦争のない平和な世界とするためには、各国が協調し、国際的に多くの困難な問題を克服していかなければならないことはいうまでもありません。それと同時に、市民や都市が平和を求める姿勢を内外に積極的に示すことも重要になっています。

 

 東京都は現在、都市交流を積極的に推進しており、そのことは、世界平和の確立のために大切な役割を果たしていると考えます。今後も、世界を代表する大都市のひとつとして、活発な都市交流が行われるなかで、貧困、飢餓、地球環境問題なども含めた平和に係わる問題を世界に向けて積極的に発信することが望まれます。

 

 本懇談会は、以上のようなことを念頭におきつつ、東京にふさわしい平和記念館のあり方について検討を行ない、笞申をとりまとめました。

 

1 平和記念館の基本的な考え方について

 

(1) 設置の意義

 わが国は、先の大戦においてアジア・太平洋の人々などに多大な被害をもたらすとともに、自らも多くの犠牲を払い、身をもって戦争の悲惨さと平和の尊さを経験しました。

 東京においては、区部の大半が焦土と化し、また、武蔵野市、立川市、八王子市などの多摩地域や八丈島、新島などの島しょ地域でも空襲を受けました。硫黄島は島全体が悲惨な戦揚になりました。

 一般都民の被害の総数は、東京都戦災誌(昭和28年刊)によると死者94、225人負偏者133、340人、不明6、944人と記録されています。

 なかでも、昭和20年3月9日深夜から10日未明にかけての東京大空襲では、墨田区、江東区、台東区などの下町を中心に一夜にして9万人にも及ぶ死者が出ています。その被害の規模は、広島、長崎の原爆被害にも匹敵するものです。

 20世紀の戦争は、一般の市民などのいわゆる非戦闘員を戦争に巻き込み、被害を極めて大きなものにしましたが、東京大空襲による惨禍はその象徴ともいえましょう。

 東京都では、東京都慰霊堂(墨田区横網2丁目)に東京空襲犠牲者の遺骨を納め、慰霊の気持ちを表しています。また、戦没者に対しては、東京都戦没者霊園(文京区春日1丁目)や鎮魂の丘(小笠原村硫黄島)などで追悼を行なっています。

 さらに、平成2年度からは、3月10日を中心に、「平和の意義を確認し、平和意識の高揚を図るため」の平和の日記念行事を実施するとともに、本年3月に開設された江戸東京博物館においては、江戸東京の歴史のなかで、東京空襲の被害状況や戦時下の都民生活の様子を展示しています。

 終戦から50年にもなろうとする長い年月が経過し、戦争を知らない世代が都民の大半を占めるようになるなかで、都民が戦争をふり返り、平和の大切さを確認するための「機会」と「場」が充実することは、大変意義深いことです。

 新しい平和記念館は、ます第一に、そうした東京都の取組みを集約する施設として、つまり戦争の惨禍を語り継ぎ、都民一人ひとりが平和の大切さを確認する拠点として設置されることが期待されます。

 

 ここ数年間に、世界は大きく変容しました。最大の変化は、旧ソ連の解体と東ヨーロッパにおける民主化、自由化の進展であり、また、それに伴う東西冷戦の終結です。

 こうした世界の流れと米ロ両国による軍縮や核兵器削減の動きは、戦争への脅威が遠のきつつあることへの希望を世界の人々に抱かせました。しかし、現実には、湾岸戦争をはじめ、民族や宗教の対立による地域紛争などが頻発し、世界の平和は脅かされています。平和な世界が構築されるまでには、まだ幾多の困難を克服することが必要と思われます。

 また、平和は従来、戦争や武力紛争がない状態として理解されてきました。そのこと自体の重要性は変わっていませんが、現代においては、単に戦争がないだけでなく、貧困、飢餓、人権の抑圧、地球環境の悪化などの幸せな生活を邪魔する問題も平和に係わる重要な問題として認識されなければなりません。 21世紀を平和な世界とするためには、こうした問題も視野に入れて、都民の平和意識の高揚を図ることが望まれます。

 一方、近代の国際社会においては、国家が外交の主役として世界の安定に深く係わってきました。

しかし今曰、人・もの・情報などの国境を越えた交流が飛躍的に拡大し、世界の相互依存と協調関係が強まるなかで、国連などの国際機関とともに、自治体や非政府組織(NGO)などによる国家を越えた活動の重要性が指摘されております。

 東京は、世界都市といわれ、さまざまな面で世界から注目され、期待される都市になっていますが、平和の面でも積極的な役割を担うことが望まれます。

 東京都は、これまで世界の平和に寄与するため、都市提携などを通じたさまざまな交流事業を推進してきていますが、さらに都民の平和を求める姿勢を世界に示すことが重要になっています。

 平和記念館は、第二に、都民の平和への願いを世界に向けて発信する拠点、つまり東京の平和のシンボルとして設置されることが期待されます。

 

(2)基本的な性格

 平和記念館は、次の基本的な性格をもつ施設として構想することが望ましいと考えます。

 

 第一は、東京空襲の犠牲者を悼み、都民の戦争体験を継承することです。

 東京空襲で亡くなった人は9万人を越え、その家族の人たちの心には忘れがたい傷あとを残しています。東京空襲の犠牲者については、関東大震災で亡くなった人とともに東京都慰霊堂において慰霊がなされており、そのことは、都民の間にも定着していると考えられます。したがって、この慰霊堂における慰霊は、今後も従来通り実施されるべきものと考えます。

 当時の惨禍をふり返ることが、人々の心に平和への願いを強くきざみ込むものであること、また東京空襲独自の慰霊の揚を求める声があることを考えると、新しい平和記念館においても、追悼の気持ちを表すことが望まれます。

 同時に、戦争体験を風化させることなく、次代に引き継ぐことは、都民の平和意識を高めるうえで極めて重要です。平和記念館は、都民の戦争体験を語り継ぐ場であってほしいと考えます。

 また、平和記念館は、先の大戦におけるアジアを中心とする世界各地の戦争犠牲者を悼み、東京を訪れる外国の人と一緒に平和を考える場となることが望まれます。東京の特徴は、世界各国の人々が集まることです。東京は今後ますます国際都市の性格を強め、この記念館を訪れる外国の人も多くなることでしょう。平和記念館は、国際都市にふさわしいものでありたいと思います。

 

第二は、平和を学び、考えることです。

 戦争の歴史と実態を客観的に伝えることを通じて、戦争を体験した世代には、平和の大切さが再確認され、戦争を知らない世代には、戦争の悲惨さが認識されるような場とすることが望まれます。

 また、戦争だけでなく、貧困、飢餓、地球環境などの今曰の平和に係わる諸問題もとりあげ、都民はもとより、東京を訪れる内外の人たちにも平和を学び、考える場を提供していくことが重要です。

 特に、次代を担う若い世代に平和を学ぶ機会を積極的に提供する拠点とすることが望まれます。

 

第三は、21世紀にむけた東京の平和のシンボルとすることです。

 東京は、戦争体験をもつ都市として、また、国際的な影響力をもつ世界都市のひとつとして、従来にも増して平和に係わる諸問題について、世界の都市や市民に働きかけていくことが求められます。

 都民の平和への願いを発信する拠点にふさわしい内容とするとともに、施設自体が平和を祈念するにふさわしい象徴性・芸術性をもったものとして整備されることが期待されます。

 

 第四は、平和に関する情報のセンターとすることです。

 戦後の歳月の流れのなかで、東京空襲をはじめとする戦争体験に係わる資料や情報の散逸が憂慮されています。また、その一方で、世界情勢は目まぐるしく変化し、都民が平和を考えるための新しい資料が増えてきています。

  多くの人々に平和の問題を考えてもらうために、戦争や平和に係わる情報を積極的に収集し、提供していく場とする必要があります。

 

2、平和記念館の事業について

 平和記念館は、戦争体験を次代に引き継ぐとともに、都民の平和への願いを内外に発信するため、次のような事業を行なっていくことが望まれます。

 

(1) 資料等の展示

 戦争と平和に関する資料等の展示は、平和記念館事業の中心となるものです。ここを訪れる人々が興昧深く見学でき、平和の大切さが実感できるような展示とすることが必要です。

 

 展示の主な内容としては、次のものが考えられます。

 

東京空襲と都民の戦争体験

 東京空襲の被害状況を中心にして、防空体制やそのもとでの都民の生活状況などをとりあげたいと考えます。

 例えば、被言状況として、焼け跡の再現模型、記録写真、映像、都民の証言、犠牲者のポートレートなどを展示するとともに、都民の戦争体験として、灯火管制や学童疎開などとりあげる必要があります。

 

戦争の歴史

 満州事変から終戦までの戦争の歴史を紹介し、東京空襲の惨禍がなぜ起きたのかを理解できるようなものにしたいと考えます。曰本がどのように戦争に係わってきたかを、被害の面のみでなく、犠牲をしいた側面からもとりあげることが望まれます。特に、アジアでの戦争の爪あとを示す資料をアジアの各都市などから提供してもらい、展示することを検討すべきと考えます。

 

平和の脅威となっている諸問題

 地域紛争、貧困、飢餓、人権の抑圧、地球環境の悪化など、現代の世界の平和を脅かす諸問題についても、世界各地の現伏や問題解決への取組みなどをとりあげる必要があります。

 資料については、できるだけ最新のものを提供することが期待されますが、このことに関連し、例えば、世界の紛争地域から関係者を呼び、世界の平和状況について都民が関心を深めるための講演会などを開催することも考えるべきです。

 

平和に関するメッセージ

 世界の諸都市、国連、平和に尽力した著名人などの世界からのメッセージを紹介し、平和に関するさまざまな考え方を示すことも重要です。また、東京の小・中学生が諸外国の小・中学生と平和のメッセージを交換しあうようなことも考えられてよいでしょう。

 

 展示は、常設展示と企画展示によるものとし、写真や映像資料を重視したものとする必要があります。

 常設展示については、モニター画面に触れることで必要な情報を呼びだすことができる対話型の展示やシミュレーション技術を利用した展示の検討が必要です。また、東京空襲の被害については、実物資料だけでなく写真や模型なども活用して、分かりやすいものにする必要があります。その際、犠牲者の個々人の生活の様子などが見えるような工夫をすることが望まれます。

 企画展示は、常設展示とともに展示の両輪をなす重要な活勤です。今曰的なテーマをとりあげることや、内外の平和関係施設との連携による資料などの多彩な内容を展示することを通じて、平和記念館を都民の関心が高い施設となるようにしたいものです。

 

 展示の留意点としては、第一に、小・中学生や海外からの来館者をはじめ、誰にも分かりやすく、また胸を打つようなものとする必要があります。展示資料の解説などを複数の言語により行うことも大切です。

第二に、江戸東京博物館や国の戦没者追悼平和祈念館(仮称)における展示と関連に十分配慮しつつ、できるだけ独自性のある展示を心がける必要があります。

 

(2)資料・情報の収集、提供

 戦争と平和に関する資料や情報は、国内にとどまらす、国際的なものも収集に努めることが重要です。特に、変化する国際情勢の動向などについては積極的に収集し、企画展示を通じて都民に提供することが望まれます。また、図書や映像資料を幅広く収集することも望まれます。

 資料・情報の提イ共については、児童から大人までのさまざまな来館者に対する資料の相談や閲覧のほか、平和についての学習を支援するための図書や映像資料の貸出し、さらに他の自治体などが設置する平和関係施設への資料の貸し出しなど、多様なサービスを検討する必要があります。

 なお、収集した情報を効果的に提供していくため、最新の情報機器を活用すべきと考えます。

 

(3)普及活動

 多くの人々に平和記念館を知ってもらうとともに、平和記念館に集う機会を積極的に提供し、平和に関する知識を広めていかなければなりません。普及活動としては、シンポジウム、講演会、コンサートなど、各種の文化的イベントを幅広く開催することが望ましいと考えられます。また国際交流の拠点として活用されることも平和記念館の役割といえましょう。

 次に、戦争と平和に関する資料、パンフレット、ガイドブックなどの印刷物や映像を作成し、普及活動に役立てることも必要です。自主企画の事業のほか、東京都平和の曰記念行事や区市町村の平和事業との連携を検討するなど、さまざまな機会をとらえた普及活動を行なうことが期待されます。さらに、世界の平和創造に向けた都民レベルの国際的なボランティア活勤の活発化が望まれますが、平和記念館がそれらを支援する役割を担うことも検討されてよいでしょう。

 

3、施設の整備について

 

(1)施設の構成と規模

 平和記念館は、展示や情報提供などの場となる「資料館」、各種集会や文化的行事を行う「ホール」及び戦争犠牲者を悼み、平和の願いを示す 「平和のモニュメント」の3つの要素から構成することが適切と考えられます。

 

〔資料館〕

 資料館は、展示室を中心として、平和に関するさまざまな資料や情報に触れて平和の大切さを実感し、平和を学ぶ場となるものです。若い世代の団体などに対して分かりやすく説明が行える空間や、資料収蔵のための施設などもとり入れる必要があります。

 資料館の主な施設内容としては、常設展示室・企画展示室のほか、オリエンテーションルーム、映像ルーム、図書室、会議室、資料室、ミュージアムショップなどが考えられます。

 

 〔ホール〕

 平和記念館には、シンポジウム、講演会、コンサートホールなどのイベントや国際的な行事にも利用できるホールを設置する必要があります。文化活勤の交流や国際的な人の交流は、平和の象徴ともいうべきものであり、幅広い文化活動や国際的な集いを展開できるようにしたいと考えます。

 ホールは、コンサートなどにも適した質の高いものにするとともに、普及活動や各種のイベントの開催を考慮して定員500人程度、延床面積にして2、500㎡程度の規模とすることが望まれます。

 

 上記の資料館とホールをあわせた建物の規模については、他の自治体などにおける類似施設を参考にすると、延床面積にしておおむね4、500~5、000㎡程度が想定されますが、それぞれの具体的な規模の設定は基本計画策定の段階で、建設場所の地形や入館者数の想定などに配慮しつつ、あらためて検討される必要があります。

 

 〔平和のモニュメント〕

 平和のモニュメントは、東京空襲の犠牲者を追悼し、同時に先の大戦中の世界の戦争犠牲者を悼むものでありたいと考えます。また、このモニュメントは、21世紀に向けた都民の平和への願いを世界に訴えるものとする必要があり、平和を祈念する「像」や「塔」などが考えられます。

 その規模や、これを建物の外の空開に設置するか、建物のなかに設置するかなどについては、立地場所等との関連を考慮しつつ、今後、十分検討される必要があります。

 

(2)設計と建設にあたっての留意点

 第一は、東京の平和のシンボルにふさわしい、芸術性の高い施設とすることです。そのため、施設の設計にあたっては、コンペ方式の導入などの工夫をこらす必要があります。

 

 第二は、小・中学生などの次代を担う若い世代の団体が訪れやすいようにすることです。そのため、大型バスの駐車揚を整備することなども必要と考えます。

 

 第三は、高齢者や障害者などのハンディキャップをもつ人ノマの利用にも十分配慮する必要があります。

 

 第四は、外国の人たちにも利用しやすい施設にするため、複数の外国語による案内表示などが必要です。

 

 第五は、都民の一人ひとりが身近に感ずることができるような施設とするため、例えば、平和のモニュメントの設置に際して寄金を呼びかけるなどの試みを検討することが望まれます。状況が違い、必ずしも同様な方策をとることはできないと思いますが、沖縄の「ひめゆり平和祈念資料館」の建設にあたって、ひめゆり同窓会による募金活動が行われたことなどは、参考になると思われます。

 

(3)立地条件と建設候補地

 平和記念館の立地条件としては、

第一に、東京大空襲との関連性を考慮し、できるだけ下町地域が望ましいこと。

第二に、来館者の利便に配慮し、交通の便が良く、利用しやすい揚所であること。

第三に、東京のシンボルにふさわしい景観を備えた場所であると同時に、施設の規模に見合った土地が確保できること。

などがあります。

 

 これらの条件を考慮しつつ建設候補地の検討を行いました。ます、東京都慰霊堂で東京空襲犠牲者の慰霊が行われていることとの関連から、都立横網町公園内の東京都復興記念館の建て替えによる建設案を検討しました。この案は、東京都慰霊堂と一体であること、また、江戸東京博物館に近接しており、都民が利用しやすいなどの点で優れていますが、公園面積に余裕がないため必要な床面積を確保することが困難という問題点を抱えています。

 したがって、他の候補地も含めて、立地を検討することが望ましいと考えます。

 そして、その一つの候補地として、中央区佃の大川端特定住宅市街地総合整備促進事業地区内の一部にこれを求めることを提案したいと考えます。同地は、東京大空襲などの歴史と密接に係わってきた東京の母なる川ともいうぺき隅田川のほとりにあること、また、東京駅から2kmと至近の距離にあり、東京のシンボルを設置するにふさわしいこと、交通の便も優れ、さらに現在市街地整備が進められつつある場所であることなどの点で、平和記念館設置の候補地として適していると考えます。

 今後、地元区や関係者などとも協議のうえ検討されることを期待します。

 

むすびに

 世界情勢は大きく揺れ勤いています。人々の平和に対する考え方も、さまざまであると思われます。

 この報告書は、こうした多様な意見があることを前提にし、そのなかで都民の平和を願う率直な気持ちを代弁できればと願いつつ、世界都市東京に設置するにふさわしい平和記念館のあり方について検討したものです。

 今後、基本計画や実施計画の策定など構想を具体化する過程で、都民をはじめ関係団体、あるいは外国の人などからもこの構想に対する意見が出るかと思われます。それらの意見にも耳を傾けながら、具体化に向けてさらに検討を深めることを期待します。

 本報告を基に、この事業の実現が図られ、平和記念館が都民の平和を願うシンボルとなる施設として、世界の平和に寄与することを願ってやみません。

 

(付属資料は略)